アダチ版画研究所
浮世絵 喜多川歌麿 ビードロを吹く娘
浮世絵 喜多川歌麿 ビードロを吹く娘
この図は、歌麿が美人大首絵という新様式の美人画を、寛政3・4年頃(1791-92)に発表しはじめた作品群のなかの1図である。
「婦女人相十品」シリーズは、数図刊行された後、「婦人相学十躰」と改題してやはり数図刊行されたと思われる。また、落款も「相観歌麿考画」から「相見歌麿画」に変わっている。この絵だけが題名・落款を変えたものが残っているが、その経過は諸説あって想像の域を脱していない。歌麿は娘から年増まで女性の魅力を若さ溢れる筆致で描いて世の注目を浴び、人気絵師になっていった。
「婦女人相十品」では、上品、中品、下品などの様相をした美人を描くとともに、高島田の若い娘の育ちのいいあどけなさを表現しようとして、流行の玩具を口にする図を描いたのであろう。この若い娘が口にしている玩具は、ガラス製で広がった底の部分が他の部分より薄く作られているので、口から息を入れたり吸ったりすることにより振動して「ペコポン」とか「ポッピン」と音を出すのを、楽しんだものである。
紅色の市松模様の衣装も、この玩具が大流行していた世相をとらえ、歌麿が題材に選んで画にしている。その玩具は後の時代まで、東京の駄菓子屋などで売られていたが、ガラスが割れて喉へ入ると大変なことになるという親心からだんだん廃れていった。
浮世絵版画には、題名のないものも多く、従って、後世の人がそれぞれの思いで命名し、やがて妥当性の高いものが認知され一般的に使われている。本図もその類で、「ポッピンを吹く娘」とか「玩具を口にする娘」などと記されたものもある。
画面寸法 | 39.0×26.5cm |
額寸法 | 55.5×40.0cm |
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