アダチ版画研究所
浮世絵 歌川広重 隅田川水神の森真崎
浮世絵 歌川広重 隅田川水神の森真崎
広重、晩年のシリーズ「名所江戸百景」は、広重版画の集大成として、今もその名は高い。評判をとるにつれて、次々に板行されたらしく、安政3年(1856)に37枚、同4年に71枚、同5年に10枚と計118枚に及んでいる。
版元は下谷上野広小路の魚栄(魚屋栄吉)である。ここにあげた「隅田川水神の森真崎」において、広重の眼はすでに小山の上にあり、こちらに伸びる枝の先に咲く桜をまず大きくクローズアップでとらえ(それは幹の太さと一輪の桜の大きさとの対比によって分かる)、次に路上の旅人や松に囲まれた社(三囲神社か)を浅い俯瞰で描き、更に視線を上げて、正視平遠法によって隅田川の流れと筑波山の遠望をとらえている。
このような構成は、百景中でも他に類はなく、異色の一作であるといえよう。欄外に「辰八」の年記印と改印があるところから、安政3年8月の作と知れる。極印、改印は寛政2年(1790)5月以降、朱子学以外を禁じた、いわゆる寛政異学の禁に基づくもので、書物類出版に関する町触五ケ条にのっとり、同年11月行事改めを申し渡し、12月には行事検閲の寄り合いが持たれた。
この町触五ケ条というのは、何もこの時初めて作られた訳ではない。享保7年(1722)12月、町奉行大岡越前守忠相から、新板書物に関する布告として出されたままで、今までなおざりにしていたのを思い出したように急遽強化し強権をもって臨んだのである。
その目的の主たるところは体制批判の抑圧にあった。以後、毎年正月の仲間総会で「御条目」と題して読み上げられ、注意が喚起された。
浮世絵版画の場合、風俗壊乱が対象とされたもので、それが風景画にまで及んだとは、ナーバスな時代であった。だからこそ、広重のような風通しのよい風景版画が流行したともいえよう。
画面寸法 | 38.0×25.5cm |
額寸法 | 55.5×40.0cm |
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